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第2段階へ進化するネット販売
専門別に企業が分化、純粋サービス企業が誕生する

1999年6月28日[日経ビジネス]より

 米国でのネット販売事業は、「いかにもネットで売りやすそうなモノ」を売る第1段階から、「ネットでは到底売れそうもないモノ」を売る、第2段階へと進みつつある。

 「いやいや、うちの商品は宅配便で送って終わりというわけにいきませんから、ネット販売の対象にはなりませんよ」

 「対面販売や設置・保守サービスが必要となる複雑で大型の商品」を取り扱う企業トップのこんな楽観はいつまで続くのだろうか瀦叩

 ネット販売・第1段階は、確かに「いかにもネットで売りやすそうなモノ」が対象となった。本、CD、ビデオ、パソコン、周辺機器、ソフト、玩具。価格帯が1000円から20万円くらいの間で、商品を選ぶのにある種の情報(その道のプロや既に買った人の推薦など)が有用で、個々の商品にバラツキがなく、1人で軽々と持つことができ、宅配便で送れる商品である。

 ネット書籍販売最大手のアマゾン・ドット・コムは、書籍からCD、ビデオへ、ネットで売りやすい商品を品揃えする成長戦略を展開中だ。つい最近、ペッツ・ドット・コムに出資し、ペット用品をも品揃えに加えることを発表したが、なるほどペット用品はネット販売に向いている。

 一方、ネット販売・第2段階を象徴する新しい大きな動きが、一般消費者向け自動車販売と企業向けコンピューター販売の構造変化である。

オートバイテル日本進出の影響
 先ごろ、自動車販売仲介業の最大手オートバイテル・ドット・コムが日本進出を発表。伊藤忠商事、リクルートなどと合弁会社を設立した。

 顧客が購入希望車種を指定すると、オートバイテルは複数の自動車ディーラーの見積価格や在庫状況を調べてくれる。顧客はその情報をもとに、自分に適したディーラーを選ぶ。ディーラー間での見積もり競争が現在よりも激しくなるので、顧客はディーラーと面倒な価格交渉をすることなく、かなり安く自動車を購入することができる。

 オートバイテルは今のところ、自動車ディーラーから仲介手数料等を徴収する事業モデルを採択(ディーラー側も顧客獲得コストを低減できるメリットあり)し、既存の自動車流通との共存を標榜しているが、今後の成長いかんでは、販売仲介ではなく販売そのものに乗り出す可能性をも秘めている。

 自動車ディーラーは、これまで「モノを売る」機能と「サービスを提供する」機能を混然一体として顧客に提供していた。しかし、この「モノを売る」ことによる付加価値がネット販売に移行していくとすれば、自動車ディーラーは納車、アフターサービスで収益を上げる「自動車を売らない純粋なサービス提供者」へと変身せざるを得なくなる。

 企業向けコンピューター販売の世界では、既に「コンピューターを売らない純粋サービス提供者」が増えてきている。彼らの仕事は、企業がネット販売業者から買ったパソコンや周辺機器の入った段ボール箱の山を崩し、きちんとネットワークに接続して正しく動作させることだ。さらに定常状態での保守やサポートに関するサービスメニューも充実させ、サービス対象となる機種やブランドも次々と増やしている。こうしたサービス提供者の質が上がるにつれ、納入・設置も行うディーラー経由でこれまで調達されていた上位機種までがネット販売の対象となりつつある。

 「複雑で大型の商品を売ってサービスも提供する」従来型販売網が、ネット販売業者と「モノを売らない純粋サービス業者」に分離していく流れが生まれ、その結果、価格競争、サービス競争がそれぞれ独立することで、これまで以上に競争が促進されていく。

 これが、ネット販売・第2段階における流通革命の本質である。

 「販売とサービスを混然一体とした」強固な販売網を持つ企業トップは、ネット販売・第2段階への対応を、今から真剣に考えておかなければならないのである。

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