Muse Associates Pacifica Fund JTPA Mochio Umeda





The Archive

2002/12/14


昨日のゴードン・ベルの話の続きをもう少し。

MylifeBitsプロジェクトの話を聞いたとき、真っ先に思い出したのは、こんなシーンだった。彼の家で(ちなみに彼の家の中はこの雑誌記事の写真で雰囲気がわかる)話をしていたとき、玄関に宅急便が届いた。開けてみたら、ソフトが入ったCDが一枚、厳重に包装されてした。どこかのソフトウェア会社がゴードンに見てもらいたいソフトを送ってきたようだったのだ。開封するとともに、みるみるうちに、温和なゴードンの顔が険しくなって、烈火のごとく怒り出した。「何でこんなバカなことが起こるんだ!!! 送りたいのはbitsなのに、こんなstupid atomを送りやがって、くそっ、バカヤロー、・・・」と叫ぶや否や、包装紙やらパッケージやら、そういう送られてきたもの全部を地面に叩きつけて、踏みつけて、バカだ、バカだ、といつまでもブツブツ言っていた。

彼の頭の中で組み立てられた技術利用の道理にあわないことを、彼は絶対に許せないのである。そんな彼も、少なくとも一年くらい前までは、自分の住所録と電話帳は、PCからプリントアウトした紙を束にして使っていた。「アクセススピード(思い立ってから求める住所や電話番号にたどりつくまでのスピード)が、紙のほうが圧倒的に速いのだ」というのが彼の論理。 それでいて、新しいハイテク・ガジェットは全部、試して使っている。 とにかく、ゴードンのそばに居ると、色々と刺激的なのである。

昨日は、DEC時代の資料を記録したサイトをご紹介したが、もう少し広くコンピュータ産業史をカバーしたサイト がある。その中には彼の著書もすべてアーカイブされている。1991年に書かれた名著「High-tech Ventures」も、もうこのサイトで読めるようになっている。ベンチャーを起こすプロセスを、プログラミング言語で書くというなかなか面白い始まり方をするこの本を、十年前の僕は、何度も何度も繰り返して読んだ。

Start a high-information-technology company

if frustration is greater than reward

and greed is greater than fear of failure

and a new technology/product is possible then begin

exit (job);

get (tools to write business plan); write (business plan);

get (venture capital);

start (new company);

get (space, people, product development tools, UNIX license);

sell (product idea) ; design (product);

market & sell & produce (product);

while new company is not profitable then

wait; get (more $); sell (new company);

retire; wait; restart;

if entrepreneur wants to do it again then

start (another high-information-

technology company) else

start (new venture capital company);

end;

「もしフラストレーションがリワードよりも大きかったら、そして、失敗の恐れよりも欲のほうが大きかったら、そして、新しい技術や製品が作れるのなら、Begin、会社を辞め、ビジネスプランを書く道具を揃え、ビジネスプランを書け、ベンチャーキャピタルから金を集め、新しい会社を始めよ。」で始まるこの擬似プログラムを読んで、僕はゴードンに憧れたのだった。


MyLifeBitsというマイクロソフトの研究プロジェクトは、人生のさまざまな局面でのあれこれを皆ビット化、つまりコンピュータの中に記録してしまおうというプロジェクト。このプロジェクトのリーダーは、僕のシリコンバレーにおけるメンター(師匠、パーソナルアドバイザー)とも言えるゴードン・ベル氏である(ゴードンとのいきさつについては「シリコンバレーは私をどう変えたか」をご参照)。マイクロソフトのサイトによれば、「Gordon Bell has captured 10 gigabytes of articles, books, cards, CDs, letters, memos, papers, photos, pictures, presentations, home movies, videotaped lectures, and voice recordings and stored them digitally.」とのことだ。

このプロジェクトは、最近、メディアもときどき取り上げるようになっている(Saving Your Bits for Posterity - Wired News) 。ゴードンは、98年頃から、「自分の身の回りのAtom(ネグロポンテの「ビーイング・デジタル」に出てくるatom対bitsのatom)を一掃するのだ」といつも言っていて、「スキャナーが大切だ、大切だ、日本企業がもっといいものを作ってくれ」と、彼の家を訪ねるとゴードンは僕にそんなことばかりを言っていた。そうか、あれからずっと、こつこつと自分の過去をコンピュータに入力し続けていたのか!!!

彼の「GBell's CyberMuseum for Digital Equipment Corp (DEC): Documents, Photo Albums, Talks, and Videotapes about computing History」というサイトは、MyLifeBitsプロジェクトのほんの一部、彼のDEC時代の資料が記録されたページ。たとえば「On the Future of Computers」というタイトルをクリックすると、1972年、つまり30年前に彼がMITでの「On the Future of Computers」(a model for future computers, including computer classes and the prediction of new types of computers)という講義を撮影した貴重なビデオまで見ることができる。

その他にも、コンピュータ産業史の貴重な資料がふんだんに載っている。ゴードンは、自分の書斎の紙の山やビデオやカセットの山を眺めながら、「このatomを一掃して全部bitsにしてやるぞ」と言っていたわけだが、実際にこんな大掛かりにプロジェクトが進んでいるとは、僕も最近まで知らなかった。ゴードンのことを、誰もが正真正銘の天才だと言う。天才という言葉はとても曖昧なのだが、少なくとも僕がゴードンを見ていてつく づく思うのは、ゴードンは迷いなく自分を信じ続けて生きているということだ。そして、まもなく70歳に手が届こうとしている今も、子供のような純粋な好奇心を持ち続けて活き活きと生きている。彼のサイトには、セグウェイに試乗するゴードンの写真が載っている。うーん、さすが、である。ゴードンのことはまた続きを書きます。

2002/12/11


12月11日、HDDメーカーのシーゲートが株式を再公開した(数日前のBLOGでもご紹介したのでそちらもご参照)。 公開価格12ドルで、終値は11.5ドル。 このIPOにどういうPriceがつくか、新規公開のウィンドウが来年どう開いてくるのかを占う意味で、シリコンバレー中が注目していたIPOだったが、この数字はやや期待はずれで、久しぶりの大型IPOとはいえ、明るい材料とは言えないようだ。
Seagate Shares Fall After $870 Mln IPO (Reuters)

2002/12/10


GEのIT化について最新の詳細記事 GE's Drive to Real-Time Measurement が出た。また、CIOのインタビュー CIO INSIGHT: You've put so-called "digital cockpits" in the hands of managers throughout GE. What are they and how do they work?も掲載されている。ITバブルが崩壊しようが、ITの潜在能力自身が否定されたわけではまったくない。大企業のIT化については、徹底的にきちんとやったものの勝ちである。何年かたって、そのことがはっきりとわかる日がやってくるはずだ


以前にこのBLOGでも紹介したSuperNovaというコンファレンスが、昨日からPalo Altoで始まった。Bloggingもこのコンファレンス「Decentralization」の重要テーマとなっているため、Group Blogという専用ページが用意されて、膨大な量の書き込みが行われている。

2002/12/08


今週の後半、米国ハイテク産業界にいくつか前向きなニュースがあったので、とりまとめてご紹介しておこう。

一つ目は「Tech titans launch Wi-Fi company」、Intelと IBM と AT&Tが「a nationwide network of public "hot spots" that would give people wireless broadband Internet access from just about anywhere.」を構築するということで、新しくCometa Networksというインフラ系の会社ができる話。

二つ目は「IBM aims to get Rational」、IBMによるRational Software社の$2.1billionでの買収の話。

三つ目は「Drive maker Seagate plans IPO next week」、2000年に上場廃止したシーゲートが、来週、株式再公開をするという話。日経ビジネスの今年の7/11号「今こそ上場の意味を問い直せ」という文章の中で、「シーゲートが再上場するという噂は、シリコンバレーでちらほらと出始めている。先行き不透明な米国株式市場への再上場に、同社はいつ踏み切るのか。シーゲートは「米国株式市場への信認」に関するリトマス試験紙のような役割を果たすかもしれない。」と書いた。シーゲート再公開というイベントだけで米国株式市場が底を打ったとまでは言える状況にはないが、一つの好感材料であることは間違いないだろう。

>> Go to Blog Archive

Top
Home > Blog

© 2002 Umeda Mochio. All rights reserved.
contact info@mochioumeda.com