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The Archive

2003/01/11


ナノテクやMEMSに興味のある人は、Small Times(Big news in small tech: いい名前だ) というサイトがお薦め。右下の「Small Tech Newswire」という枠内には、さまざまな新聞や雑誌の中から、ナノテクやMEMSに関わる記事へのリンクを集めている。

たまたま1/10の場合は、「カーネギーメロン大学がシリコンバレーに進出する話」(San Jose Mercury News)や、「MITがやっている兵士のためのハイテク・イノベーション研究の話」(Boston Herald)へのアクセスなどが用意されていた。MITには「Institute for Soldier Nanotechnologies (ISN)」なんて組織もあるのです。


IEEE Spectrumの「2003 Technology Survey」が面白い。

これからの技術などについて、IEEE Fellow(世界中の一流技術者)を対象に行ったサーベイだ。いまFellowは6,011人居るらしいが、そのうちの565人(29 percent come from telecommunications, 17 percent from semiconductors, 15 percent from computers, 13 percent from power and energy, and 1 percent from transportation)がこのサーベイに参加したとのこと。サーベイ結果のパワーポイント・ファイルもダウンロードできる。

ムーアの法則は、あと五年は絶対大丈夫、あと十年もたぶん大丈夫、というのがコンセンサスのようだ。

「The Fellows showed remarkable confidence in the staying power of Moore's Law-the doubling of transistor density every 18 months-with over two-thirds saying it would hold true for at least another five years.」
そして新技術の台頭について、
「Many respondents, though, seemed just as convinced that some emerging technology would topple Moore's Law. Among the suggested candidates were various forms of nanotechnology (carbon nanotubes, resonant tunneling diodes, molecular transistors), photonics, giant magnetoresistance-based memories, and three-dimensional IC stacking. "I think that smart developers are investing in biologically based computing, quantum computing, and other alternatives to the IC transistor," wrote one Fellow. "This area is ripe for a disruptive technology." 」
こんな記載がある。

次号のフォーサイト連載にご登場いただくために、年末にスタンフォード大学の西義雄教授を取材したが、彼もほぼ同意見であった。


最近は毎朝、いくつかの新聞に加えて、最低20-30人のBlogを読むのが習慣になったが、米国のBlogは「コンテンポラリーなテーマに関する知の最先端」のディスカッション・プラットフォームになりつつあるのを感じます。こうしたたくさんのBlogを毎日毎日読んでいくと、自分の興味・関心領域とオーバーラップする人のBlogとそうでないものを区別することができるようになり、自分にあったBlogチャンネルをチューニングできる。そしてその自分にチューニングしたコミュニティの中で行われている議論をきちんと追っていくと、その世界において、何が課題で、何が議論のテーマになっているのかがわかるようにな る。そういう背景理解の中で、新聞記事や雑誌記事や企業発表といったウェブ上のコンテンツを位置づけながら、自分の関心領域の将来を考えることができる。

たとえばローレンス・レッシグ(スタンフォード大学教授)の「research questions: help」という、1月9日の彼のblog上で行われた呼びかけなどはいい例だ。彼は今「Free Culture」(仮題)という本を書いていて、その文脈でヘルプを求めたわけ。そうしたら、その翌10日のblogによれば、

「Thanks to everyone who responded to my request yesterday. My inbox and comment box are now deluged with fantastic ideas, and I’m now way behind in responding. Please don’t stop with the ideas. I’ll catch up in the replies soon. But thank you. I am astonished by the generosity.」
とある。いずれその内容が整理されて、レッシグのblog上に公開され、さらに議論は深まっていくのであろう。


「ほぼ日」の鳥越俊太郎さんの「あのくさ こればい!」第1008回を読んでいたら、毎日新聞が年末から始めた連載企画「民主帝国 アメリカン・パワー 第一部 イラクとの戦い」を、「イラク攻撃の陰にある様々なアメリカの内部の問題がキッチリとした取材されていて参考になる」と書いてあった。そうなると読んでみたくなるが、この連載を毎日新聞のウェブ上では読めない(少なくとも僕には見つけられなかった)。僕の場合は仕事柄、「日経テレコン21」という高額のデータベースの会員になっているので、そこにアクセスしたら読むことができた(正確にいくらかかったかは知らないが、このデータベースは高いので、事業をやっていなければ絶対会員にはなっていないはず)。そしてとても面白かったし、勉強になった。でも「ほぼ日」鳥越さんの若い読者のほとんどが、きっと、毎日新聞にこの連載が存在するということは知っても、その連載を読まないだろう。ましてや、鳥越さんのこの文章を読んで、毎日新聞を購読(月額4,000円弱)しようと決める人はいないだろう。

インターネット上のコンテンツという意味でいうと、きちんとカネをかけて取材して書かれた日本の新聞記事の大半が、インターネットでは読めない。だから若い人にはほとんど読まれない。アメリカのものはほとんど無償で読める(後から検索するにはカネがかかることが多い)。たとえばウォールストリートジャーナルだって年60ドルくらいだったかな、そのくらい安価で読める。アメリカの新聞社は、ネットとのかかわり合いの中で新しいビジネスモデルを模索しつつ、何とかコスト構造を変え、新しい時代にも存続できるよう模索しているわけだ。日本の場合、膨大な量の良質のコンテンツが、垂直統合事業モデルの中で、囲い込まれた購読者(高齢者中心)だけに提供されて消えていく。もったいないことだけれど、まあこの状況が、日本ではずっと続くのでしょうね。規制産業の最たるものである日本の新聞社には、「経営」という概念はぜんぜん存在しない(だから「構造改革」について新聞が何を書いても、自分じゃ構 造改革なんか何もやっていないのだから説得力は全くない)ので、何も変わらないはずだから。

2003/01/10


Pacifica Fundの同僚のTim Orenに「お前もBlogをやれよ」としきりに勧めていたら、新年になって「俺もやろうかな」とその気になってきた。このTimという男は、Technologyについてはおそろしく広く深い洞察を持っていて、知る人ぞ知る隠れたvisionaryなのだ。彼のBlogをどういう形で公開するかは今検討中。もし一般公開が開始されたら本欄でお知らせします。

そんな文脈で、彼と、誰のBlogを読むのが意味あるかなぁ、という話を昨日していたら、大半は僕が本欄で紹介したBlogサイトとオーバーラップしていた。唯一、彼から教わったのは、Dewayne HendricksのBlog(ブックマークに追加しておきましょう)。Dewayneは、Dandin Group「research and product development in the area of broadband wired and wireless data devices and services」のCEO。「member of the Federal Communications Commission (FCC) Technological Advisory Council」でもある。

偶然ながら、このDewayneのBlogの1/8で引用されているClay Shirkyという人の書いたものについても、Timによれば、「厳密にいうとBlogではないけれど、読むに値する」とのこと。Shirky.comは、「Clay Shirky's Writings About the Internet --- Economics & Culture, Media & Community, Open Source」という名のサイトで、1/7にアップされた最新の論考(Dewayneも引用していたもの)は「Customer-owned Networks: ZapMailand the Telecommunications Industry」 である。


人間誰しもウィークポイントというものがある。僕の場合は将棋である。子供の頃から、そう強くもないくせに、とにかく将棋を観る(棋譜を並べる、観戦記を読む、テレビ将棋を観る、タイトル戦の大盤解説会に行く、などなど)のが好きで好きで仕方なく、プロ棋士は遥か遠くにある憧れの職業であった。そうそう、そういうわけで、今、僕のPCには、ここ20年間の主要対局のほぼすべてを含む約11,000局の棋譜が、インストールされている。考えてみると11,000というのはおそろしい数字で、毎日10局並べても3年かかる膨大な量だ。でも、これだけの量の棋譜が自分のPCの中に存在しているということだけで、僕はとても幸福な気分になれる。さらに最近は、将棋年鑑という棋譜データベース(500-600局)が年に一回売られるようになり、読売新聞が竜王戦倶楽部という有料会員制サービス(年8400円)をはじめて、毎月、30-40局は最新棋譜をダウンロードできるようになった。おまけに多くのタイトル戦がリアルタイムでインターネット放送されるようになったので、シリコンバレーに居ても、タイトル戦が気になってなかなか忙しい。突然、何でこんなことを書いているかというと、羽生善治竜王が竜王位を防衛したので、自分のことのように嬉しくて、少しはしゃいでいるのである。

ところで僕は、顧客企業以外では日本での講演をいっさいしないのであるが、一年半前、産経新聞社から「箱根での棋聖戦二泊三日観戦プラス棋聖戦控え室への出入り自由、加えて東京駅集合で羽生棋聖(当時)と一緒に同じ新幹線に乗って関係者皆で箱根に出かける、それと引き換えに、あるところで講演」という、僕のウィークポイントをえぐるような条件を提示され、くらくらして、思わず休みをとって、引き受けてしまった。それが縁で羽生さんと友達になったのだから、こんな素晴らしい話はなかったなぁと、恥ずかしげもなくニコニコしてしまう。一芸に秀でた人は突き抜けて凄い、というのはよく言われることだが、この羽生善治という31歳は、将棋の天才であるばかりでなく、礼儀、気配り、優しさといったことも含めた人間としての基本がほぼ完璧にできている人だ。それは棋聖戦での二泊三日の間の彼の立ち居振る舞いを見て何度も感じたことだったのだが、最近、彼とのさりげないメールのやり取りの中でも同じようなことを感じるとき、僕は十歳年下の彼に深い畏敬の念を抱くのである。

将棋ついでに言えば、島朗八段著の新刊、「島ノート」という本も素晴らしい。羽生善治とは違う意味で、この島朗という人物の才能もとてつもない。将棋について頭の中が完全にクリアに澄み切っている上、読者がどういう頭の働かせ方をしながら棋書を読むのかという顧客視点をも本能的に掌握している人(こういう二つの才能が組み合わさることは稀だ)が書いた本だというのが、読んでいてよくわかる。星の数ほどある棋書の中でも、この本は大きな達成を果たしている。「無人島に持っていく一冊」なんて陳腐で現実味のない設定ではあるが、尋ねられたら僕は、この「島ノート」を無人島用の一冊に選ぶような気がする。


尊敬する編集長、新潮社・伊藤幸人氏が推薦する一冊、「もう虫歯にならない」という本を読んでみた。読んで驚いた。これは掛け値なしにいい本です。定価467円は、タダみたいなもの。 本書のエッセンスは、予防の重要性、ということに尽きる。それを最新の学問で裏付けながら、実に説得力に富んだ語り口で読ませる。どういう分野でもここ十年の間に学問は進歩しているものなのだなぁと感心した。そして、アメリカで僕が受けている歯科予防医療の考え方が、まさにこの本で書かれている通りであることに深く納得してしまった。メカニカル・トゥース・クリーニング<機械的歯面清掃法>、つまり「歯科衛生士 が行う約一時間かけての歯の徹底的クリーニング」をやることがとにかく重要と、この本は指摘している。アメリカの場合、六ヶ月以上間隔をあければ、このメカニカル・トゥース・クリーニングは健康保険の対象(僕が入っている保険だと自己負担は35ドルくらい)になる。よって、半年に一回、約一時間という時間と約35ドルのカネを投資して歯をメインテナンスすることを歯科医(歯のホームドクター)から勧められるわけだ。歯医者にいくというのは、それがいくらいいことであっても億劫なものだが、この本を読んで改めて、半年に一時間と35ドルの投資は利にかなったものであるこ とを痛感した。

ところで「8020運動」(ハチマルニーマル運動)って、知ってますか? 何だと思いますか?そういうゴール設定の仕方に実は感動してしまったのだが、「80歳になったときに、自分の歯が20本残っているようにしよう」という運動、だから、「8020」。僕も、「8020」を、これからの人生の目標の一つにすることにした。


William GibsonがBLOGを始めたというのが、こちらでは話題になっている。スタートは1月6日。原則として毎日更新するということらし い。Bookmarkに追加しておきましょう。長続きすることを期待しつつ。


アップルがらみのBLOGをあれこれ読んでいたら、「Dave Hyatt, a member of the Safari team at Apple (that's their new Web browser)」がBLOGをやっていることがわかった(Bookmarkに入れておきましょう)。BLOGのタイトルは「Confessions of a Mozillian」(モジラ開発者の告白)。モジラとは言うまでもなくネットスケープが起こしたオープンソース・ブラウザ開発プロジェクトだ。2002年の4月から始めたこのBLOGのアーカイブを読むと、面白い話がいろいろと書いてある。僕もまだ最初のほうしか読んでいないが、昨年4月7日に書かれた、なぜモジラは失敗したかについての省察は示唆に富んでいる。

「One reason that Mozilla has failed to produce a strong user interface is that nobody seems to be able to define just who Mozilla's target audience is. According to Netscape, the target audience is their own remaining user base. Netscape has traditionally produced browsers that are pitched at the intermediate user.
Even within Netscape, however, you have people working at cross purposes, with marketing forces, motivated by a desire to make money through tie-ins to AOL Time Warner Web properties, directing engineers to introduce features that compromise the end user experience.Looking outside of Netscape, you find that many coders contribute to the project in order to introduce their own pet features into the product, features that are frequently thrown together without a care for end user experience. Some of these user interface oddities would make even the staunchest geek's head spin.
So you have all of these smart people both inside and outside who get involved with the project for many different reasons. Some are employed by Netscape and just punching the clock. Some are just trying to find a way to make money for Netscape. Others are involved because they have a platform agenda, e.g., to produce a great Linux desktop browser. I fall into a group that wants to eschew the "geek" features and put the end user first, even if it means producing a browser that a techie might not want to use.」
結局、失敗は、ターゲットユーザを誰も特定できずに、異なる意図を持った関係者が勝手にバラバラに開発していたことに起因するという。 これはオープンソース開発によるソフトで、マイクロソフトのような企業が開発するソフトに対抗するための条件を考えるうえで、とても重要な証言である。


アップルはシリコンバレーではやはり特別の会社である。ジョブズが行う「製品デモを含むスピーチ」のカリスマ性は見る人を魅了するものなのだが、1月7日、サンフランシスコで開かれているマックワールドでジョブズがキーノートスピーチをした。さすがにシリコンバレーのローカル紙・San Jose Mercury Newsは、豊富な情報量でマックワールドをカバーしている。
Steve Jobs: Still standing, still evangelizing
Macworld kicks off 'year of the laptop'
Apple's software strategy is intriguing
David Plotnikoff: Jobs inspires the faithful Macworld: Apple Tries to Expand Reach

シリコンバレーでは頑固に今でもマックを使い続けている人も多いし、ウィンドウズを使っている人の中にも「仕方ないから」といつも言い訳を考えながら使っているマック・ファンも多い。僕も97年に独立するまではずっとマック・ユーザーで、お正月恒例・サンフランシスコのマックワールドには毎年出かけていたものである(90年代前半には東京から出張したこともある)。「独立するまでは」なんて、思わず無意識のうちに書いてしまうのは、「本当ならばマックを使い続けたかったんだけど、社会に適応しないと商売をやっていけないのですよ、すみません」というような気分(改宗、転向した後ろめたさみたいなもの)を含んだ言い訳なのである。

しかしジョブズという人も本当にしつこく我が道を行っている。このへんの連中は皆、そういう彼を、心のどこかで深く尊敬しているのだと思う。

2003/01/09


インテルとマイクロソフトについては、Red Herringの「The Craig Barrett peprally: Intel's CEO has a bullish outlook for the tech industry.」と、Infoworldの「Microsoft: from research to reality」が最新。前者はインテルCEOのクレイグ・パレットを取材したAnthony Perkinsのコラム。後者はマイクロソフトのSVPで研究開発のトップ、Rock Rashidのインタビュー。

パレット「I have never seen more new technology in my life, Soon most every computer device will also be a communication device, and every communication device will also be a computer.」
パレット「Intel's online sales for 2002 will total $25 billion, making it one of the biggest e-commerce companies on the planet. He also said that Intel buys another $10 billion in products online annually.」
パーキンス「the business world at large will wake up and realize that if it doesn't consolidate its operations onto the Web, as companies like Cisco Systems, Dell Computer, and Intel have done, it will be at a serious competitive disadvantage.」
バレット「Technology is still developing according to Moore's law, and so is its use and application.」
バレット「Even Intel's VC operation, which, at its peak, was investing $2 billion a year in private-equity money, has slowed to about $175 million a year. If the VC community continues to remain on hold, we could see a drought of new ideas.」
バレット「I see the computer market turning around in the first half of 2003. However, the telco turnaround won't be happening until 2004,」
ラシッド「Something like Google is a great way of finding information that isn't particularly well structured, but the one thing that something like Google really lacks is indexing depth in terms of the information they're working with.」
ラシッド「We're doing research in something like 55 or 60 different research areas. It covers a pretty broad collection of things, many of which are basic areas of research in computer science that have been going on for a long time. Natural language is a good example:」
長いので引用しないが、ラシッドのインタビューの最後の部分は、地味だがマイクロソフトのCore Competencyに関わる話。


90年代後半に創刊されたニューエコノミー系の雑誌の中で何とか生き残っている「Fast Company」 のから面白いものをいくつか。

まず「Fast Talk: Time for a Turnaround」組織のターンアラウンドを任されたCEO六人のインタビュー。まぁどうという内容ではないが、アメリカの経営者の「当たり前のことを実に論理的に聞こえるように話す話し方」が参考になるかもしれない。

続いてPo Bronson(サンフランシスコ在住の作家、たしかチャールズ・ブロンソンの息子)の「What Should I Do With My Life?」。彼の同名の近著のPromotion記事だが、そこそこ面白い。沢木耕太郎の「彼らの流儀」みたいな、アメリカの普通の人たちのたくさんの人生に密着して生の意味を問うという感じの本。彼はバブル最盛期に、シリコンバレーの人々を取材して、「Nudist on the Late Shift: And Other True Tales of Silicon Valley」という本を出した。邦訳は「シリコンバレーに行きたいか!」(けっこう面白い本です)。だから、Bloggerの中からは、「ついこの間まではバブルを煽っていたのに、バブル崩壊と同時にすぐに宗旨替えして、人生はカネじゃない、いかに自分がやりたいことを達成するかだ、なんてことをしゃあしゃあと書きやがって」という批判も出ているが、まあそう目くじら立てることもないだろう。

そしてもう一つ。最新のゲリー・ハメル節を聞きたい人は、「Innovation Now!」。十年一日の内容ではあるが、同じテーマを繰り返し語り続けるのも、立派な芸のうちである。

2003/01/08


僕の師匠、Gordon Bell氏のインタビューがCNETに掲載された。68歳のGordon、相変わらず元気そうで何よりである。Gordonについては昨年末に何回かに渡って本欄に書いたので、それをご参照

冒頭に出てくる「Vannevar Bush in the July 1945 issue of the Atlantic Monthly」とは、「As we may think」 という論文のことである。しかしこのインタビューは、GordonのGordonらしいcrazyなところがよく出ている。

「One of the capabilities we have in MyLifeBits now is that you turn on the browser or the explorer and capture every page you looked at. The system now captures everything that you see that comes to you electronically. You've got all that. I'm capturing phone conversations, so those are available. I've got a Sony voice recorder, and that will be another capture device, so in principle every onversation you have could be captured there. The TiVo capability could get you all the TV you'd ever watched. Today we can't do that because it's a gig(abyte) an hour. That's kind of practical, but whether or not you want to save all that junk is another question.」
自分がブラウザで散策したすべての情報、行った電話の会話、見たテレビ、全部記録するのだという。

聞き手が「Why would you? What's the point of saving all this information?」とか「I'm still not sure I understand the value of recording all this information, or at least what value would compensate for the substantial privacy risk involved.」と聞いても、ぜんぜんまともな答えが返ってこない。Gordonは自分が面白いからやっているだけで、自分が面白いと思うことを信じているだけなのである。

僕は以前書いた「New New Thing」という本の書評で、シリコンバレーの本質について、こんなふうに書いた。

"シリコンバレーを動かす中核の本当に凄い連中は、実はいろいろなことについてあまり何も考えておらず、本書が描くクラークのように、ただ無邪気に遊んでいるだけなのである。シリコンバレーの構造とは、「ある種破綻した性格を併せ持つ尖った連中を自由に(めちゃくちゃに)遊ばせておくことによってのみ、とんでもなくすごいイノベーションが確率的に生まれる」ということを、その周縁の「やや凡庸だが社会性を持った連中」(この層がまた分厚い。経営者、ベンチャーキャピタリストなどビジネスマンは皆このカテゴリーに入る)がよく知っていて利用する、という姿をしていると私は考えているが、その雰囲気を伝え尽くした文章に出会ったのも初めてであった。"
Gordonはジム・クラークほど性格的に破綻してはいないが、仕事については同じような人なのである。


シアトルタイムスに掲載されたシアトルの四人の起業家の鼎談。起業家の立場からの本音で米国ベンチャー世界の現在はどう見えるか。

「To me, there have always been three things that VCs (venture capitalists) have looked for, and recently they've added a fourth one: management team, barrier to entry/unique technology and size of market. The fourth one they've added is ... what's the cost of acquiring a customer?」
「For instance, whenever we talk to VCs, of course we paint a huge potential IPO picture, but anyone who reads our business plan can see 15 different ways our company can be acquired in three to five years. Today's entrepreneur needs to be a lot more intelligent about his plans for other potentials.」
「It's not a good time to raise money. Even if you could raise money, I wouldn't take it at the dilution I would get.」
「I haven't been paid for two months, but the thing that keeps me awake at night is that we have a really neat technology and some patents pending, but we are growing really slow. My only hope is that there isn't a competitor that we don't know about sneaking up behind us. That, to me, is the balancing act between how much dilution and how much money you want to take.」
「The last $15,000 I raised was as time-consuming as the last million I raised before that. The $15,000 I'm trying to raise now, I've spent seven weeks on, with an attorney and everything. A couple thousand dollars used to be a phone call, and then you'd have a couple people fighting over who was going to write the first check. This has literally taken six weeks. I might get the money wired tomorrow. I haven't been able to pay employees. I had to lay them off. And this is money that would hopefully restart the company, but it is very painful. We've had to give up a lot in terms of equity and other concessions to get this money.」
仕事柄、こういう起業家の声はよく耳にするのだが、起業家の肉声が活字になる例はそう多くないので、ご紹介した次第。鼎談の最後の質問は、資金調達に個人債務保証をしているかどうか。皆、最近は、大なり小なり、しているようですねぇ。厳しい時代です。


1月3日付の日経新聞、ガルブレイス氏(1908年生まれ)の「経済教室」は面白かった。残念ながらネットでは読めないが、深い含蓄に富んでいる。

「かつてはのんびりとくつろぐこと、特に肉体労働や単調な作業から解放され、有閑階級の仲間入りをすることは人間の基本的欲求と考えられていた。また実際もそうだった。だが、いまや、どれほど忙しいかが評価の対象となり、仕事熱心な人ほどほめそやされる。余暇を楽しむ人は称賛の的にはなるまい」
「所得が減っても、暇になった時間を楽しく使うほうがいいではないか」
「退屈な仕事の繰り返しから解放されることは、人間の基本的欲求のひとつであるはずである。もっと、ほかのことをしたり、人によってはただのんびりしたりするのもいい。もし、いま私が日本に住んでおり、そしてもっと若かったなら、失業保険をもらいながら好きな勉強をする喜びを捨ててまで、新しい郵便局の建設作業に従事しようなどとは考えないだろう」
納得、納得。偶然か意図的か、経済教室の隣の欄「やさしい経済学 巨匠に学ぶ」は、名著「有閑階級の理論」の著者ヴェブレン。これからの日本のキーワードは「有閑階級」なのかもしれません。


California Ups and Downs Ripple in the West」というニューヨークタイムズの記事は、カリフォルニア経済の今を実感させてくれる。90年代とはうって変わって、L.A.周辺地区の経済がよくて、

「The brightest spot in the state economy is the ring of fast-growing counties around Los Angeles where Mr. Pineda lives ・San Bernardino, Riverside, Orange and San Diego. Unemployment in these counties ranges from 4 to 5.5 percent, kept low by an expansion in retail and business services, along with the growth of biotechnology companies and a burst of spending on Pentagon research and development. The statewide unemployment rate is 6.4 percent.」
S.F.周辺(シリコンバレー含)が悪い。
「But the San Francisco Bay Area remains mired in a technology slump, with skilled and formerly wealthy workers fleeing to find jobs elsewhere and analysts worried that it could be years before the next new thing revitalizes Silicon Valley.」
「The technology industries in the Bay Area continue to shed jobs, with employment falling by 87,000 people last year. An estimated 40,000 people have left Silicon Valley in the past year in search of work elsewhere. Unemployment in precincts once seen as a model of the new, technological future, has jumped from less than 2 percent in 2000 to nearly 7 percent at the end of this year. In some areas, it is much worse. "In my neighborhood, I would personally estimate that there's probably 40 percent unemployment among senior executives," said Mr. Kaplan, 50, who lives in Hillsborough, a wealthy enclave south of San Francisco.」
彼の娘のサッカーチームのサイドラインには、応援のため名だたるexecutiveが揃うという。そうそう、今のシリコンバレーはそういう感じです。
「No one knows when - or if - the turnaround will begin. (略) He noted that technology operates in decade-long cycles and that the current slump could last until an innovation comes along to spark another boom -perhaps in biotechnology or wireless communications. The personal computer, software and the Internet are now mature technologies, unlikely to reignite the region.」
「perhaps in biotechnology or wireless communications」
が牽引役かどうかは別として、全体観については全く同感。シリコンバレーが果たしていつどういうふうに再び甦るのか、はたまた「20世紀初頭のピッツバーグ」のように、このまま緩やかに衰退していくのか。 観察対象として、こんなに面白いものはない。

2003/01/07


マイクロソフトが鳴り物入りで始めたオンライン雑誌「Slate」はいまMSNの一機能となって生きているわけだが、そのSlateの「Cash is king」という記事が面白い。

「”Zombie" company is a term coined to describe pointless but still operating Japanese companies. U.S. zombies differ from their Japanese counterparts, which are essentially bankrupt but survive only because the banks refuse to call their loans. The gaijin zombies, by contrast, are flush with cash left over from the late-'90s venture-capital and IPO gold rush. And because they cut back swiftly after the bubble burst-and because, unlike manufacturing companies, they don't have giant fixed costs-they can survive for years without doing much business. Or in some cases without doing any business.」
日本の不良債権問題に関して、ただただ存続し続ける問題企業群を米国メディアがゾンビ企業と呼んだことは有名だが、アメリカにもゾンビ企業はたくさんいる。でもその内容が違う。日本のゾンビは
「essentially bankrupt but survive only because the banks refuse to call their loans」。
アメリカの外人ゾンビは、
「flush with cash left over from the late-'90s venture-capital and IPO gold rush. And because they cut back swiftly after the bubble burst-and because, unlike manufacturing companies, they don't have giant fixed costs-they can survive for years without doing much usiness. Or in some cases without doing any business.」。
要するに、直接金融で調達した調達済み資金がなくなるまで、コストを下げてサバイブするから生きている。

Corbisという光ファイバーの会社はいっとき、時価総額が$36 billionに達したわけだが、四半期の売り上げは$1.35 million。でもキャッシュが$548 millionあるからいつまでも生きられるのである。こういうのを外人ゾンビというわけだ。M&Aによって、こうしたゾンビ企業のキャッシュとアセットを優良企業の中に取り込んで、再生していくことが重要なのである。


米国IPOマーケットについては、San Jose Mercury Newsの「Silicon Valley IPOs were scarce in 2002」と、Wall Street Journalの「Optimism Emerges for Return Of Tech, Telecom Firms' IPOs」を概観するのがいい。

San Jose Mercury Newsによれば、

「only six companies headquartered in Silicon Valley went public in 2002, raising $1.19 billion. That's a fraction of the $8.5 billion raised by 78 local companies in 2000, when the IPO frenzy peaked.」
シリコンバレーのローカル企業の2002年のIPOはたったの6つで、調達総額は$1.19billion。しかしこのうち、シーゲートのIPOが$870milとその大半を占めているので、残り5社で$320mil。78社が総額$8.5billionを調達した2000年と比べると、昨年の冷え込み状況がよくわかる。

お正月ということもあって、Wall Street Journalは、 「After three years on the bench, the IPO market for technology and telecommunications companies finally may be limping back into action, analysts and investment bankers say.」 と書くが、現実はそう甘くはないだろう。Technology関係のIPO pipelineに、いま四社。

「Of the four tech IPOs on the list, only one -- technical-services concern Aecom Technology Corp., a $150 million deal -- is expected to raise more than $100 million. The one telecom deal, wireless-services provider InPhonic Inc., is set to raise $90 million.」
シーゲートのIPO後の株価推移はDisappointmentだったわけで、これらのIPO後の株価によっては、後続のIPOが延期になることも十分に考えられる。


年初らしい2003年の産業・技術を展望する記事をいくつか。まずはBusiness Weekの「How Telecom Can Turn Itself Around」。テレコム・メルトダウン状態からの回復にはまだまだ時間がかかりそう。続いてZDnetの「Ten technologies to watch in 2003」。Wireless networks, Location-based services, Holographic storage, Solar power, RFID, Telematics, Robotics, Lighting, Gaming, Displaysの10個。一、二年前からだいぶ様変わり。そしてWall Street Journalの「Computer-Consulting Industry Appears Ripe for Consolidation」。産業のconsolidationは2003年のキーワードの一つだろう。EDA(Electronics Design Automation)産業についてはEETimesの「EDA vendors brace for 90-nm challenge in 2003」。EDA産業というのは、Mentor Graphics、Cadence Design Systems、Synopsysを三強とする小さな産業なのだが、激しい技術変化の最先端を切り開くのはいつも新しいスタートアップという構図で、地味だがなかなか面白い世界なのである。この記事はそういう具体的なスタートアップの話も出ていて情報豊富だ。


ベンチャーキャピタリストの肉声としては、LA TimesによるRedpoint Venturesのパートナー、Brad Jonesのインタビュー記事「Redpoint Ventures Is Taking It Slow」は、わりあいと本音を語っていると思う(今の時期、VCは、本当の本音の話は誰もしませんけれど)。このRedpoint Venturesは南カリフォルニア最大のVCの一つなので、LA Timesがカバーするわけだ。アメリカは日本と比べて圧倒的に地域分散しているので、LA TimesSeattle TimesBoston GlobeWashington Postといった地方新聞のテクノロジー欄にもときどき掘り出し物がある。このインタビューもそんな掘り出し物の一つだ。2003年のIPOマーケットについては、彼も非常に慎重である。

Boston Globeの「VCs are bracing for a bleak landscape in 2003」もVC産業の総括としては、よくまとまっている。


戦争の影響は確実にハイテク産業にも現れ始めている。ソフトウェア産業のconsolidationのところでも触れたが、株式市場が低迷するといい技術を持った会社の値段が安くなる。一方で国防予算の増額で防衛産業は好調ということで、防衛産業側が買い手になったM&Aが年末にはいくつか続いた。 「The Military-Technology Complex」という記事に詳しい。こういう話題は、さすがにワシントンポストがいい。


New York Timesの「Professors Vie With Web for Class's Attention」という記事。WiFiのキャンパス普及が教室での授業などに及ぼす影響について。確かに教室にLaptopを持ちこみ、それがブロードバンド接続されている状況は、全くもって昔と違う。ある教授が、教室へのPC使用を禁止しようとしたとき、

「The students "went ballistic," he said, and insisted that their multitasking ways made them more productive and even more alert in class.」
学生たちが激怒したという。授業を一方的に聞くだけでなく、PCを使ってマルチタスクをしたほうがProductiveだというのが学生の主張。

ところで、この記事に出てくるBlackboard.comというスタートアップ。クライアントリストをみればわかるように、大学を顧客に、e-education softwareを提供する会社だ。97年に設立されて、有望スタートアップと評判も高く、資金も$100mil以上調達し、マイクロソフト、AOLタイムワーナー、デルといった企業が出資した。2002年の第三四半期に$19mil売り上げているから、単純に四倍すれば、$76milの年間売り上げ。さらに、「Blackboard's third quarter 2002 EBITDA (Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization) was positive $1.0 million, compared to negative EBITDA of $5.5 million for the same period last year. Additionally, Blackboard ended the third quarter of 2002 with $16.0 million in cash and cash equivalents and generated $3.2 million in positive cash flow for the quarter.」とある。スタートアップとしては堂々たる数字である。バブル崩壊後にビジネスモデルを変え、確実に収益を出す事業モデルに転換した 企業群の一つといえる。資金調達を緊急に必要としないところまで持ってきたこうしたIPO予備軍が、市場動向を見つめながらIPO時期をうかがっているところが、米国スタートアップ世界の懐の深さである。


2002年のノーベル経済学賞受賞者、米プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授のインタビューがSan Jose Mercury Newsに載っていた。「Nobel prize winner Kahneman on investor psychology」。氏の受賞理由は「不透明な状況下での判断・決定など、経済学における心理学研究の活用」だが、このインタビューのテーマは投資家の心理について等。まったくの副産物だが、このカーネマン教授のことをGoogleであれこれ調べていたら、「Fisher Hallの人々」というエッセイ(筆者によればフィクションだとのこと)を見つけた。中島大輔さんというプリンストン大学に留学中の日本人研究者(経済学)のサイト。ついでにいうと、この人が書いた「留学アプリケーション日記」(東大の経済学部で指導教官に強く留学を進められてからの日記。筆者によればフィクションだとのこと)はけっこう面白く、学生時代をとても懐かしく思い出した。


伊藤洋一氏のサイト「ycaster」に、年末の韓国取材旅行記がさっそくアップされている。特にここ5-6年、韓国では、かなり急激な世代交代という「壮大な社会的実験」が行われている。この報告には、今回の韓国大統領選挙に果たしたネットの役割についても詳述されている。

「今回の韓国の大統領選挙で一つ面白かったのは、民族主義的色彩を持つ盧武鉉支持世代(386世代と言われている=1960年代に生まれ、80年代に大学を通過し、90年代に30台を過ごした)が、本来は国境を越える性格を持つ、もっとも開放的なツールであるインターネットを使いこなして、自分たちの支持する候補を当選させたことである。386の下の2030世代(20代、30代)、さらにレッド・デビル世代(ワールドカップ支援の原動力世代)はもっとそうだ。」
一方、韓国の中央日報の日本語版の「「韓国の画一的な入試制度がいや」留学の熱風」という記事によれば、留学志向の若者が増えているという。
「修学能力試験(大学入試試験)に向けた勉強よりは、いち早く留学を目指し、SAT(米国の大学を受験する際の資格試験)や英作文などに力を注ぐ生徒が急増している。」
日本の若い世代は、どういう方向に向かっていくのだろう。


ウォールストリートジャーナルから米ソフトウェア産業でのM&A展望

「Overall, the mergers-and-acquisitions market in the U.S. remainsdepressed. But the past month has seen a steady flow of software deals,both large and small, such as International Business Machines Corp.'s $2.1 billion Dec. 6 acquisition of software-tools maker Rational Software Corp. and Yahoo Inc.'s $235 million purchase last week of search-engine pioneer Inktomi Corp. In between, Veritas Software Corp., Cognos Inc. and Sybase Inc. also completed some holiday acquisition shopping.」
なかなか充実した内容である。やはりWall Street Journalは有償購読に値する数少ないメディアである。IBMとYahooとVeritasとCognosとSybaseのソフトウェア会社買収の話はそれぞれ次のようなディールだ。

IBM aims to get Rational
Yahoo to acquire Inktomi
Cognos acquires data-software maker
Veritas snaps up two software firms
Sybase plans to get AvantGo

M&Aが活発化するということは、買収対象企業の値段、つまり株式市場が、いまだいたい底値にあるという評価が背景にあるということなので、インダストリー全体としては好感するわけだ。

いくつか前のBLOGでご紹介したダン・ギルモアのクイズの中でも、「Microsoft will buy several successful PC software competitors (Adobe Systems? Macromedia? Intuit?)」(ギルモアの予想はYES)というのがあった。

2003/01/05


2003年展望のつづき。LA Timesの「Tech Industry May Get Upgrade in 2003」とBusiness Weekの「What Will Revive IT Spending」。企業のIT投資についても、格別の明るい要素はなさそうである。ワシントンポストはさすがワシントンの新聞らしく、「Security, Telecom Top Tech Policy Agenda for 2003」で、今年の技術政策の中心はテレコムとセキュリティだと総括しているが、これもよくまとまっているが、特に目新しい話はない。


2003年を展望するIEEE(米国電気電子学会)の年初の特集。「WHAT'S WRONG-WHAT'S NEXT, SPECIAL REPORT: 2003 TECHNOLOGY FORECAST & REVIEW」。相当のボリュームである。

IT関係に限れば、
What's Wrong With Telecom
What's Right With Telecom
Three Takes on Telecom's Trouble
The End of the Middle
Hardware Hangover
The Perfect Handheld: Dream On Can't
We All Just Get Along?
Fame, but No Riches, For Cybersecurity
A Sea Change for Semiconductors
の9篇からなる。

テレコムコンピュータ半導体 についての2002年の総括年表だけでもとても役にたつ。


今度はヨーロッパの視点から。Financial Times(FT)の2003年予測。 FTのライターが分担して、ヨーロッパから見た重要テーマについて見解をまとめている。

「Will the stock markets end 2003 higher or lower? Global stock markets are likely to suffer another year of poor returns as the world economy falters. Although many analysts are forecasting an upturn in share prices next year, they have been proved wrong in each of the past three years. The leading global stock indices will close next year at similar levels to this year, or lower.」
「Will IT spending recover? Almost certainly not. Critical to information technology spending is the corporate sector's profitability. With no sign of a strong return to top-line sales growth, the only way to boost profits is by cutting costs such as IT spending.」
株価についても、IT投資についても、あまり楽観的ではない。


目をインド、中国、台湾に転ずれば、The Economic Times(powered by indiatimes)の「BPO firms to maintain growth tempo in '03」。BPOとは、business process outsourcingの略。

「Indian business process outsourcing (BPO) firms are expected to maintain their surging growth rates through ’03, as orders continue to flow from foreign companies wishing to outsource their costly operations to India.」
Business Processをインドにアウトソースする流れは、間違いなく英語圏では、主流になっている。マッキンゼーがいうインフラサービスである。Wiredの「IT Staffing Crisis Looms in India」は、その成長を阻害する要因は、マネージャー不足だというが、
「The growth of the IT-enabled services and business process outsourcing markets has India poised to become the back office to the world. But a shortage of middle and senior-level managers in the country could quickly derail that goal.」
こういう力づくで解決可能な問題は、そう難しくないのである。中国・台湾でいえば、「Expansion in China, Taiwan could create another capacity glut」。中国・台湾の半導体生産が供給過剰をもたらすという話。関連する内容として、「Taiwan chip companies make big investment in China」。冷戦の終焉、グローバル化、IT活用、中国の市場経済への本格参入、こうしたキーワードはすべてデフレ経済につながっていく。


これからのアメリカ経済についてのPaul KrugmanのNew York Timesコラム。「Merry Christmas? No no no.」で始まるこの文章は、アメリカ経済のこれからを考えるにはいい素材だ。自分(クルーグマン)を含むペシミストが予測する個人消費の失速、オプティミストが言う経済回復、のいずれも今のところ起こっていないという現状から、どこへ向かうのか。「Are you enthused? I'm not. I hope I'm wrong, but this doesn't look like a happy new year.」とのこと。

San Jose Mercury Newsのコラムニスト、ダン・ギルモアは、「What's ahead? Take the annual quiz」で、12個の来年を占うためのクイズを提示し、それに対する自分の予想(回答)を示している。ダンは、2003年末時点で、Nasdaq(12月末が1335.51)がさらに100から500の間くらい、下げているだろうと予測している。それ以外のクイズも面白いので是非トライしてみてください。


さてこれからしばらく、年末年始にアップされた膨大なコンテンツの中から、僕が面白いな(参考になるかな)と思ったものを、五月雨(さみだれ)式にご紹介していくことにしましょう。

2002年を総括する内容としては、FortuneのPeter Lewisの「Best of 2002」と「Worst of 2002」から。Bestのほうはハードウェアのインクリメンタル・イノベーションが多く、Worstのほうは、DARPA Information Awareness Officeが構想するTIA(Total Information Awareness program)の話。

Wall Street Journalの記事は有料でフリーアクセスできないのでこのblogではあまり紹介していなかったのだが、ZDnetで記事が限定的に日本語訳されているもの(フリー)から三つほど。 「2002年の勝者」、「数字で振り返る2002年」、「2003年に笑うハイテク企業は……?」。それぞれ2-3ページにわたっていますので、ご注意を。

また、半導体産業に絞っての2002年の総括が、「SBN's Top 10 stories for 2002」。SBNというのは、Semiconductor Business Newsの略。

以上のコンテンツのすべてに共通するのは、分析はあまり鋭くないが、FactとTrendを包括的に押さえるのには悪くないということ。

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